構成生薬はほとんど同じ
違うのは芍薬の量と膠飴
さて主薬はどれでしょう?

 桂枝湯の構成生薬が言えるのなら桂枝加芍薬湯も小建中湯も言えたも同然。しかし主薬は異なる。主薬が違えば方剤の役割も変わってくる。

【基本処方:桂枝湯(詳細は桂枝湯とその派生処方 その1参照)】

 No.45(桂枝湯):桂枝、芍薬、生姜、大棗、甘草

適応:外感風寒表虚証

主薬は桂枝で、経絡を温めて風寒を発散させる。芍薬は風邪を治す要薬で、鎮痛・鎮痒作用がある。これに「生姜+大棗」が副作用防止・作用緩和の目的で配合される。最後に諸薬の調和の目的に甘草を入れると桂枝湯のできあがりだ。

【桂枝湯の派生処方】

 No.60(桂枝加芍薬湯):桂枝、芍薬↑、生姜、大棗、甘草

適応:中焦虚寒、腹痛

桂枝湯にもっと芍薬を加えると桂枝加芍薬湯になる。すると主薬は芍薬になり、その鎮痛・鎮痙作用が主役となる。もちろん「芍薬+甘草」の組み合わせもある。甘草、大棗は甘温の性質で温中補虚、つまり中(中焦、消化器のこと)を温め、虚を補う作用がある。さらに桂枝、生姜で温め、寒を除く。

臨床では胃痙攣や腸痙攣など「急に痛くなる」ような場合に用いられる。西洋薬では奏功しにくい、すい臓がんの腹痛などにも効果を示すこともある。ただし、手足の冷えなどの虚寒に用いる方剤のため、熱証には避けたい。

 No.99(小建中湯):桂枝、芍薬↑、生姜、大棗、甘草、膠飴

適応:中焦虚寒、腹痛

桂枝加芍薬湯に膠飴を加えると小建中湯になる。たかがアメ、されどアメ。なんと主薬なのだ。

膠飴にも温中補虚の作用がある。甘草、大棗は温中補虚の作用をさらに強める。芍薬+甘草で鎮痛、鎮痙に。桂枝、生姜で温め、寒を除く。

ゆえに小建中湯はその名の通り、弱った中(消火器)を建てなおす方剤となる。

虚寒性の(温めると軽くなるような)胃痛・腹痛に用いる。桂枝加芍薬湯よりもさらに鎮痛・鎮痙、温補の働きが強くなっており、腹痛が「持続的でつよい」場合に用いられる。

この小建中湯と桂枝加芍薬湯の使い分けのポイントがもう一つある。それは膠飴がある方がよいかどうかとも言える。それは腹部膨満感があるかどうかだ。膠飴があるとガスがさらに発生してしまう。よってガスによる腹部膨満感がある場合は、小建中湯ではなく桂枝加芍薬湯の方が適している。

【投薬時の注意点】

No.60(桂枝加芍薬湯):手足のほてりやのぼせがある方には避ける。

No.99(小建中湯):手足のほてりやのぼせがある方には避ける。また甘味が強いので、ガスによる腹部膨満感のある方や糖尿病の方には避ける。